フォーカシング技術の説明

再構成の失敗はCTシステムのハードに起因する幾何誤差により起こる場合が良くあります。ハードの問題としては次の問題があげられます。

  • 検出器の取付角度の問題
  • スキャン起動の誤差の問題

これを防止する為に装置の調整をしっかり行えばある程度の改善は認められるのですが、どうしても装置の構造や材質により限界があるのも事実です。TomoShop®にはハードの問題で起こる幾何誤差が原因の再構成の問題(アーチファクト等)を軽減するフォーカシング補正機能が搭載されております。

このフォーカシング補正機能はOmni逆投影技術の高汎用性およびGPUの高速演算性を利用してハード的に起こる幾何誤差を自動的に抽出します。そして、再構成画像のアーチファクトを軽減します。

フォーカシング技術による幾何誤差の補正は、数学的な最適化(数理計画)理論に基付き、再構成画像の情報量と画質を度量する評価関数を最小化することにより行います。評価関数として、情報理論に基づいたエントロピー関数を使用した手法[1]があります。しかしこの手法の欠点として、ノイズがある場合は、最小値の唯一性が欠落して下の図に示すように、最適化アルゴリズムの安定性が低くなってしまいます。

TomoShop® では、ノイズがあっても、 最適化アルゴリズムで強力にノイズ補正が可能になるように評価関数を設定して、 ハード的に起こる幾何誤差をより正確に評価する事によりアーチファクトの軽減を可能にします。

マーカー・フォーカシング機能(Ver5.5以降から利用可能)

マーカー・フォーカシング機能は、投影画像データに写っているサンプル/その部位の位置を複数の方向からマニュアル的に検知して検出器、ステージそしてX線源のCTスキャン時の起動誤差の補正を行います。

この機能を使用する時は、サンプルの近く/その一部にマーカー(球体)を設置して撮影すると厄介なランダム機械誤差(ランダム的に生じる機械の動作誤差)を補正する事が可能となります。

この時に取得した補正値は他の似たような条件のサンプルをCTスキャンする場合や同じ装置を使う場合に最利用して補正を行う事が可能です。

機械の振動など原因で起こるランダム的な機械誤差

マーカー(球体)は画像上では円であるのでこの円心をロックオンして補正する。

 

補正前と補正後の比較画像1

下の例は、複数のボール(球体)を使ってサンプルをCTスキャンしています。

補正前

補正後

補正前と補正後の比較画像2

下の例は、上の例と同じく複数のボール(球体)を使ってCTスキャンしています。

補正前

補正後

マーカー・フォーカシング機能の技術は、OpenCVを利用して円形状の円心を検出して各マーカーの三次元的な位置やそのモーション誤差を正確に推定して補正値を出して補正します。

 

[1] Y. Kyriakou, R.M. Lapp, L. Hillebrand, D. Ertel and W.A. Kalender,Simultaneous Misalignment Correction for Approximate Circular Cone-Beam Computed Tomography, Phys. Med. Biol. Vol. 53, No. 22, pp. 6267-6289, 2008.